Pocket
LINEで送る

財産がたくさんある人は「相続税対策」に悩み「生前贈与」をいろいろ工夫するようです。自分には財産がそんなに無いから、と思っている人も一度試算しておきましょう。生前贈与の知識を知っておいて損はないですよ。贈与のルールは年によって変わります。



スポンサードリンク



相続税は生涯最後の税金

多くの人は人生の中で数々の税金を支払っています。生涯最後の税金が「相続税」です。でも、相続税を考えなければならないほどの財産を残さないで旅立てば払わない税金です。相続税を払う必要のある財産とはどれくらいなのでしょう。

相続税がかかる財産の額はいくら?

同じ額の財産を残しても、相続人の人数によって相続税が必要なケースと不要なケースとあります。

相続税が必要なのは、財産の額が次の式の値を超える場合です。

3,000万円 + (600万円×相続人の人数)

例えば…

同じ財産額が5,000万円であっても

ケース1:家族が妻と一人息子の場合は
相続税がかかります。

3,000万円 + (600万円×2人)=4,200万円

4,200万円以上持っているので相続税がかかります。

ケース2:家族が妻と子ども3人ならば
相続税はかかりません。

3,000万円 + (600万円×4人)=5,400万円

財産は5,400万円以下ですので相続税は払いません。

相続税がかかるケース1の場合は、元気なうちに、贈与税のかからない範囲で少しずつ贈与して上手に引き継ぐことを考えます。

相続税がかからないケース2は、贈与して贈与税を払ったりするのはもったいないので贈与は考えなくてもいいでしょう。上手に相続するようにしましょう。

財産にはマイナスの財産も

財産を計算する場合、財産の種類を大きく4つに分けて考えましょう。

それらをプラスマイナスして「3,000万円+(600万円×相続人数)」を超えると相続税がかかってきます。

まず普通に考えると「プラスの財産」として次のようなものがあります。
現金・預貯金・有価証券・家や土地などの不動産・車・その他

次に、「みなし相続財産」として死亡保険金・死亡退職金があります。
亡くなったときの財産のうち、死亡が理由で受け取るものです。
これらはそれぞれ「500万円×法定相続人人数」分は非課税です。

また、誰の財産なのか実態で判断すべき財産があります。
子や孫の名義で作った名義預金や名義保険契約や、相続人への過去3年以内の贈与などは、実態によって故人の財産とみなされてしまうこともありますので注意が必要です。

年110万円までは贈与税非課税、のルールがあります。ですから相続人名義の通帳を作りそれに入れてあげるのはOKです。でも、その通帳を、自分で管理していてはだめです。受け取る本人が通帳の存在を知っている、もしくは本人に渡してある、ならば受け取る人の財産であり、亡くなった人の財産ではありません。そこ、注意しましょう。

また、死亡当時の「銀行の残高証明が限度額以下だからOK」ではありません。過去の贈与も税務署では調査することもあるようです。前月やここ2~3年の大きな動きを見るようです。過去3年の間に渡していたものは計算上もどす、というルールがあるのです。ただし、その渡す相手が相続人じゃない人(孫や嫁、お婿さん、甥姪など)でしたら返さなくてOKです。

ちなみに、銀行の履歴データは10年間残っています。税務署は10年前のものまで調べることができます。もし、心配な場合は、この先10年以上長生きして、データが消えるのを待ちましょう。

財産は、元気なうちに少しずつ渡す、というのがルールなんですね。

さらに、「マイナスの財産」もあります。財産を計算する際にマイナスする財産もあります。
葬儀費用、お布施、未払いの租税公課や入院費、さらには借金もマイナス財産です。

財産の額はこれらの4つの要素をプラスマイナスして計算します。今は自分の財産を自分で計算する時代です。自分で試算してみましょう。

 

相続税を払うより生前贈与がwinwinでしょ。

「相続」とは亡くなった後に相続人へ財産を引き継ぐことです。故人の意思にかかわらず、法に従い、ある意味自動的に渡されます。相続人にしてみれば「もらってあたりまえ」的な感覚にもなりやすいです。

「贈与」は、元気なうちに渡すことができます。認知症になってしまっては無理です。贈与する側ともらう側の双方の納得ずくで行われます。もらう側は「ありがたいなぁ」となります。
ただし、渡し過ぎはよくありませんよ。ほどほどにしましょう。渡し過ぎて自分がスッカラカンにならないようにしましょう。

贈与の方法もいろいろあります

試算をしてみて相続税申告が必要、となったら…。
「生前贈与」を考えてみましょう。
贈与の方法もいくつかあります。

a.暦年贈与
気軽にできますが、注意が必要です。

b.相続時生産課税制度
生前の贈与税はツケに。相続のとき精算する方法。

c.贈与税の配偶者控除
メリットが多いけどデメリットも多いです。要注意です。

d.教育資金の一括贈与
期間限定ですからよく考えて行いましょう。

e.結婚・子育て資金の一括贈与
これも期間限定です。よく考えましょう。

f.住宅取得資金の贈与
子・孫の住宅取得の際、一定額まで非課税で応援ができます。詳細はハウスメーカーで。

 

それぞれを詳しくみていきましょう。

a.暦年贈与
年間110万円までの非課税枠を使う方法です。

贈与税がかかるのは…

1年間にもらった財産の合計額が110万円以下でしたら贈与税はかかりません。申告も不要です。1年間とは、1月1日から12月31日までの1年間です。
もらった財産の合計額から基礎控除の110万円を差し引いた残りの額に対して贈与税がかかります。

例えば…

父が子へ400万円の車購入資金を贈与すると…

贈与額400万円-基礎控除110万円=290万円

税率表より、税率15%、控除額10万円なので

290万円×15%=435,000円
435,000円-10万円=335,000円

子が払う税額は335,000円になります。

子は翌年2月の確定申告が必要です。

b.相続時精算課税制度
贈与時には贈与税は払わず、相続(死亡)時に精算する方法です。

・この制度を選択した場合、その後の撤回はできません。(暦年贈与はできません)。
・贈与税の期限内申告が必要です。
・この制度を選択した贈与者ごとに2,500万円の特別控除(非課税)があります。

贈与時には非課税ですが、相続時にはその非課税にした分も精算して課税します。ですから、将来的に、財産額が相続税の基礎控除を上回らない見込みの人には効果的です。

例えば…



スポンサードリンク



不動産と預金を合わせて3,000万円の財産がある祖父が、孫に300万円の贈与をする場合、この制度を利用すると、孫は贈与税申告をしておくだけで税金はゼロです。

そして、父の死亡時には、その他の財産とその孫に贈与した300万円を合算し父の財産が3,000万円ですので、基礎控除以下であり、相続税申告は不要です。

逆に、相続税が発生しそうな財産の額の人がこの制度を使うのは節税にはなりませんので注意が必要です。節税ではなく、「税金の先送り」というのが実態です。節税にならなくてもいいから早く贈与したい、という人以外は使わない方がいいようです。

c.贈与税の配偶者控除
夫婦の財産を分散し、それぞれが税金のかからないようにする方法です。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与について、基礎控除110万円のほかに2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

結婚20年以上で、配偶者へ無税で自宅を贈与できるのです。

その要件は4つ。
・結婚した日から贈与した日までの婚姻期間が20年以上経過している
・贈与財産が居住用不動産、または居住用不動産を取得する金銭である
・贈与された配偶者が翌年3月15日まで住んでいる
・この特例を受ける旨の贈与税の申告書を税務署に提出する

とてもお得に思えますが、残念なことに、この特例を使っても得にならず、損をする場合も多いようです。

・そもそも、夫婦間の相続であれば最低でも1億6千万円までは無税で相続できるという「配偶者の税額軽減」という特例があります。

・それに相続の際に利用できる「小規模住宅等の特例」が生前贈与では使えないのです。あくまで相続のときにしか使えない制度です。

・一番わかり易いのが、不動産の贈与による名義変更の税金が高額になってしまう点です。

名義変更に伴って、不動産取得税と登録免許税が必要です。不動産取得税は、固定資産税評価額に土地は1.5%家屋3%の税率をかけて計算します。登録免許税は2%です。

不動産取得税が
2,000万円×1.5%=30万円前後

登録免許税は
2,000万円×2%=40万円

合計で約70万円にもなります。

これが「相続」で不動産をもらうときには
不動産取得税は非課税ですし、登録免許税は0.4%とかなり低くなります。
不動産は贈与で渡すのは結構コストが高くなるのです。
この額をかけても贈与が得になる人でしたらこの制度を使うといいでしょう。

d.教育資金の一括贈与
30歳未満の子供か孫に対して、教育資金として1,500万円まで贈与しても非課税でいいですよ、という制度です。

通常は年間110万円を超える贈与には贈与税がかかりますから、それに比べるととてもお得感があるようですが、少々使い勝手が悪いという評判もあり、あまりおすすめではないようです。

・この制度は、金融機関で専用の口座を開設し、教育資金として使った領収書を銀行に提出しなければなりません。

・またこの資金は30歳までに使い切らなければなりません。30歳になったときに、使いきれなかった金額には贈与税が課税されます。

・この資金を教育資金以外に使用すると、30歳になったときにその贈与額に対しての贈与税が課されます。教育資金以外に使い切ってしまっていたりするとその贈与税を払うお金を他から工面しなければなりません。

この1,500万円という数字は受け取れる金額の上限です。孫がこの制度を受けられる祖父母は4人いますが、片方の祖父母から1,500万円の贈与を受ければ、もう一方の祖父母から贈与を受けることはできなくなります。

そもそも教育資金の贈与は昔から非課税です。
ただしその条件は「必要な都度、贈与すること」です。
国税庁HPにもあります。

No.4405 贈与税がかからない場合

『贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
<国税庁HPより抜粋>

このようなことから、わざわざこの特例制度の利用はあまり意味がないのです。金融機関が儲かるしくみになっているので、その意味でもあまりおすすめではありません。

教育資金は、必要になった都度、お祝いとしてあげるのがいいでしょう。

e.結婚・子育て資金の一括贈与
20歳以上50歳未満の子どもや孫に、結婚や子育てに関するまとまったお金を贈与した場合、1,000万円までは非課税の制度です。

・教育資金とほぼ似たようなしくみです。

・ただし、こちらは2019年3月31日までにスタートする必要がある期限付きの特例です。

・お金をもらった子や孫が50歳になったときや、もらったお金を使い切ったとき、使い終わるまでにお金をくれた贈与者が死亡したときに終了します。
50歳になるまでに使い残したお金があると贈与税が課税されます。

利用するときは、毎年、領収書の提出が必要です。使った内容に応じて、戸籍謄本や住民票の写し、賃貸借契約書の写し、母子手帳の写しなどの提出が必要になります。贈与税がかからずにお金をもらえる代償としての「手続きの手間」は忙しい共働き世帯などの場合は「もらえるのは嬉しいけど、手続きが面倒」というのが本音のようです。

この新しい制度ができる前から、扶養に関するお金を親や祖父母が子や孫に「その都度、直接、必要な分だけ」あげるのなら贈与税はかかりませんでした。
扶養に関するお金とは、結婚式や引越し費用、不妊治療や出産、子育て、保育園や幼稚園費用などが該当します。

「まとまったお金をもらえるけれど、手間がかかる特例」よりもその都度もらえる方が助かる、という人が多いのではないでしょうか。

f.住宅取得資金の贈与
子や孫が住宅を購入するための資金援助であれば、700万円(認定長期優良住宅の場合には1,200万円)まで贈与税は非課税、という特例です。

あくまで住宅を新たに取得するための資金援助に限定されます。既存の住宅ローンの返済のための資金援助は対象ではありません。

この制度を利用できる条件は次のとおりです。

・贈与を受けるのは子供か孫であること(直系であることが条件です。例えば妻の両親から夫が贈与を受ける場合などには、この特例は使えません)

・贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を新築や取得していること

・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は遅滞なく居住することが見込まれること等

この非課税制度を受けるためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に、税務署に贈与税の申告をする必要があリます。

贈与をするとき ここに気をつけましょう

元気なうちに互いに納得して財産をゆずる贈与。こんな点に注意しましょう。
証拠をしっかり残しましょう。
旅立った後にトラブルにならないように証拠になるものを残しましょう。
・現金を手渡すのではなく、振り込みましょう。
・契約書を作成する方法もあります。

参考:契約書の例

・確定の日付をわかるように残しましょう。
・贈与税の申告書の提出をしましょう。

あげる人・もらう人の合意が必要です
あげる人の
「あげましょう。大事に使ってね」
もらう人の
「ありがとう。大切に使います」

もらった人が自由に使えるようにしましょう
贈与はもらった人が自由に使えなければなりません。
「無駄遣いをしないように」と、あげる側の人が通帳の管理していては贈与になりません。

分割とみなされないように注意しましょう。
高額の贈与の分割払いとみなされないよう注意しましょう。

例えば「1,000万円の贈与を目的に毎年100万円を10年で贈与」は分割みたいにみなされることもあります。

金融機関の商品にこういうタイプのものもあるようですがグレーです。送った側の死亡例がまだ発生していないので税務署の対応がまだ不明です。

まとめ

贈与って本当にむずかしいです。贈与したい時期・相手・もの・財産額などによって変わります。
ルールが変わるので時期が大事です。贈与の相手によって渡し方が変わります。贈るものは何でしょう?財産の額によっても渡し方が変わります。税がかかる人かからない人…ややこしいけど、ほんの少しでも、頭の中を整理して、不安を解消、すっきりしちゃいましょう。


スポンサードリンク





にほんブログ村 ライフスタイルブログ おひとりさまへ にほんブログ村 シニア日記ブログ 終活・エンディングノートへ