Pocket
LINEで送る

「遺言書」は、お金持ちが書くもの、と思ってました。もしくは少々事情がある人が書くもの、と。例えば子どもが先に亡くなっている人や、未婚の人、先妻の子がいる人など。



スポンサードリンク



でも、特段事情もない人でも、そんなにお金持ちでない場合でも、遺しておくと遺族がとても助かるようです。相続を開始するまでに準備することが随分減らせるんですね。

 

家族が亡くなると手続きがたくさんある

家族が亡くなると、健康保険証の返還や年金の死亡届けなど、役所などへ届出をします。

届出だけならまだ単純なんですが、金融機関へ解約手続き、となると、これは「相続」になってくるので、手続きが単純ではない話です。

解約した預金等の行く先は誰に?…厳格に決めなければ将来トラブル必須ですからね。銀行さんからいろんな書類を揃えるよう言われます。

相続する「遺産」には、預金だけでなく、現金や小切手、有価証券、土地や建物などの不動産、車、貴金属などの動産、ゴルフ会員権などたくさんあります。亡くなった方が残した「権利と義務」の全てが「遺産」です。

それらを全部をひっくるめて、相続を考えるのですから、厳密にすることはとても重要ですし、大変な作業です

もし、遺言書が残されていれば、それに従って相続を実行すればいいので、比較的ラクに早期に相続ができます。でも、遺言書がない場合の「法定相続」は遺族が大変な思いをします。

 

「法定相続」が開始できるまでにはたくさんの作業が必要です。それもとてもストレスフルな作業です。

相続が争族になってしまうような心配な原因が特段ない人でも、相続人がよりスムースに準備が進められるように遺言を遺しておくことがオススメです。

 

法定相続はストレスだらけ…

相続手続きの流れは、「遺言書がない場合」と「遺言書がある場合」とで違ってきます

遺言書がない場合

遺言書が用意されていなければ「法定相続」になります。

法で定められた割合で相続することになります。その割合等を変更する場合は「遺産分割協議」が必要です。次のような手順が必要になります。

①相続人の確定
②財産分けの話し合い
③A「遺産分割協議書」の作成。
または
③B「裁判所で調停・審判」

その後、相続手続き開始となります。

 

ストレスだらけの法定相続

列挙すると単純そうですが、実はこの手順のどれもが大変なストレスを伴う作業です。相続手続き開始までのハードルはかなり高いですよ。

 

ストレスその1
①相続人の確定では…

相続人の全員分の戸籍を揃えなくてはなりません。

「亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍」が必要になります。これは、「遺言」でも「法定相続」でも必要です。

遺言ではない場合は、さらに、相続の対象になる人全員の戸籍を揃えなくてはなりません。

亡くなった人のゆかりの人ではあっても、会ったことも見たこともない人が相続人でいることもあります。対象者が全部で何人になるのかも、よく確認する必要があります。そしてその人がどこに住んでいるのかを調べることから始めなければなりません。戸籍を50通くらい集めなければならないケースもあるそうです。気が遠くなる作業、かもしれません。その手数料もバカになりませんし。

 

 

ストレスその2
②財産分けの話し合いでは…

相続人全員での財産分けの話し合いが必要です。

でも、結論がすぐ出せるでしょうか?

公平に分けることができないことも多いです。

財産が自宅しかない、のでしたら分けられませんよね。
生前に多く渡されていた子どもがいることもあります。
ハンデキャップがあったりする子には特別な対応が必要かもしれません。

 

平等はとてもむずかしく、なかなか結論が決められませんね。

 

ストレスその3
③A話し合いが成立すれば「遺産分割協議書」を作成します。

それには全員の実印押印が必要です。

でも、実印が押せないケースもあります。

相続人に認知症や心の病の人がいたり、相続人が海外に居住している場合も難しいです。海外の場合は「サイン証明」の方法もありますが、これもなかなか大変です。また、行方不明者など連絡が取れない家族がいる場合もあります。
実印をもらえないケースは案外多いですね。

 

ストレスその4
③Bもしも話し合いが成立しなければ「裁判所で調停・審判」…

これは何年もかかることもあります。
さらに弁護士費用も発生してしまいます。

 

これだけの手順を経て相続の開始ができるまでには、たいてい3か月から半年の時間がかかるようです。
調停がまとまらなければもっと時間がかかることになります。

なかなかのハードルです。

 

遺言書があればハードルが下がる

遺言書があれば相続手続きがもっとスムースに開始できます。

遺言書があれば、相続人や相続分に関係なく、遺言書に書かれた内容に従って相続が行われます。

 

戸籍等を全て集めなくてもいいですし、財産分けの話し合いをしなくてもいいです。実印をもらいに行かなくて済みます。ストレスがぐっと減ります。

 

でも、遺言書の形式は法律で厳格に決められているので、ちゃんと形式が整っていないと無効になっちゃいます。注意が必要です。

 

遺言書には2種類あります。

「自筆証書遺言」

「公正証書遺言」です。

 

 

「自筆証書遺言」は裁判所の「検認」がめんどう

手書きの遺言書でいいのです。日付、氏名を記入し押印します。

手軽でいつどこでも書けますし、費用もかかりません。誰にも知られずに作れます。

でも、内容が不明確になりがちですし、形式が不備な場合は無効になってしまう恐れもあります。紛失・偽造・変造・隠匿の恐れもあります。

一番厄介なのは、家庭裁判所の「検認」が済んでからでないと開封できないことです。自宅で勝手に開封できないのです。

そしてその「検認」は相続人全員を裁判所に集めて本人が書いたことを証明する作業があります。

結局、これも相続人全員が関わらなければ進まないのです。あんまり現実的ではないような気がします。

 

「公正証書遺言」が遺族には一番楽ちん

「公正証書遺言」は、「公証人役場」で、2名の証人の前で、遺言内容を述べ、公証人が遺言書を作成します。

公文書として強力な効力を持ちます。
家庭裁判所の「検認」手続きが不要です。
原本を公証役場に保管するので、紛失・変造の心配がありません。

一番いい点は、死後すぐ、死亡の翌日から遺言の内容を実行できる点でしょう。

相続人全員での話し合いが不要で、実印や印鑑証明書を貰わずに手続きができるので、一番楽ちんです。ハードルがぐっと下がります。

ただ、証人と作成費用が必要です。

証人は2人。家族じゃない人で。もし、見つからなければ公証役場に一人1万円でお願いできるそうです。

公正証書作成費用は、「遺産総額」「相続人の人数」「製本・謄本の枚数」によって決まるそうです。まあ、これくらいの額で安心が買えるんならいいかな、と思いますね。



スポンサードリンク



 


※公証人って?公証役場ってどこ?
公証人とは、法律の専門家であって、当事者その他の関係人の嘱託により「公証」する国家機関です。

公証人は、裁判官、検察官、弁護士、法務局長、司法書士などの長年法律関係の仕事をしていた人の中から「法務大臣が任命」します。

公証人が執務する場所を「公証役場」と呼びます。

公正証書遺言は、必ずしも地元の公証役場でなくても、どこの公証役場でも作れます。

お近くの公証役場はこちらでご確認ください→公証役場一覧


 

遺言書必要度チェック

「遺言書を書いておいたほうがよかった」というケースは多くあります。

1 子がなく、配偶者と親・兄弟姉妹が相続人となる場合
2 相続財産が分割しにくいものである場合
3 同居している子どもに自宅を相続させたい場合
4 子どもたちの仲が悪いので、あらかじめ財産の割合を決めておきたい場合
5 先妻の子と後妻の子がいる場合
6 妻の連れ子に財産を遺したい場合
7 子の中で特別に財産を多く与えたい者がいる場合
8 財産を与えたくない子がいる場合
9 相続権のない孫や兄弟姉妹に財産を与えたい場合
10 介護してくれた長男の嫁に財産の一部を与えたい場合
11 内縁の妻や認知した子に財産を遺したい場合
12 生前世話になった第三者に財産の一部を渡したい場合
13 相続人がいないので、財産を公益事業に寄付したい場合
14 農地や担保に供されている賃貸用不動産や自社株が相続財産の大半である場合
15 相続人の中に行方不明者がいる場合

 

あれれ、気になることがいくつかありました。

1については姉貴にアドバイスしとこうと思います。あ、友人のA子にも教えてあげよかな。

私は2、4、15が気になるなぁ…

 

遺言書を書いておいたほうがいい人って案外身近にいますね。

 

遺言書を作っておくと良い事例

特段の事情がなくても、普通のお家でも公正証書遺言があった方がいいケースもあるんですよ。

例えば、娘達全員が遠い他県へ嫁いだ3人娘の父親の相続の場合。

父の住所地の金融機関の手続きは遠隔地からでは大変です。

①3人の中の一番近い住所地の娘一人に全部相続して、
②その子から全員に分配するように、

という遺言を残すと子どもたちもラクになりますね。

 

結婚をしていない人は必ず遺言書を作りましょう。

子どもや配偶者がいないので、相続は、まずは親の代へ行きます。

両親が死亡している場合はさらに祖父母へ行きます。

祖父母の死亡を確認して初めて兄弟へ相続の順番がきます。

そこまでをたどる戸籍が必要になります。それって超タイヘンでしょう。それを回避するために、①遺言で兄弟の一人へ全てを相続します。②その後その人から他の兄弟へ分けてもらいましょう。

 

先妻の子がいる場合

先妻と離婚後は、先妻はもちろん、先妻の子の連絡先なんて分からないでしょう。

こんなケースでは、遺言で「①いったん、後妻に全てを渡すけど、②後妻が4人の子どもに配るように」と書きます。

そうすれば、戸籍を集めたり実印をもらったり話し合ったり、は不要になります。

 

子どもが先に亡くなっている場合

①いったん妻に全部を相続し、②その中から長男・孫に払うよう遺言します。

妻は、長男や孫に「だいじにしなさいね」と言って渡せます。

 

公正証書遺言を作るときの注意。遺留分には特に注意して。

遺言執行者を指定します

遺言執行者とは、遺言者に代わって遺言の内容を実現させる人のことです。遺言で指定することが多いです。

一般的には、推定相続人や受遺者がなる場合が多いです。でも、信託銀行や弁護士など専門家がなることもあり、手数料とかを100万円とか請求されることもあるようです。専門家でなくても大丈夫です。家族でもできることなのでよく考えましょう。

指定がない場合、家庭裁判所へ遺言執行者を選任してもらうことができます。

 

「遺留分」には特に注意して!

法定相続人には「遺留分」という最低限の相続の権利があります。「ずるいよ!」って言える権利ですね。

遺言の内容があまりに不公平な内容であった場合や、生前贈与によって最低限の保証が受けられない場合に、民法が法定相続人の財産を保証するために設けられた制度です。

遺留分の割合は「直系尊属のみが法定相続人になる場合には3分の1、それ以外のケースでは2分の1」です。

遺留分が侵害された場合、侵害された法定相続人は侵害している相続人、受遺者(遺言により贈与を受けた人)に対して侵害権を請求することができます。

 

遺留分を侵害する内容の遺言があっても、侵害された相続人が何も文句を言わなければ、その遺言はそのまま有効になります。

その場合、遺留分があっても、その法定相続人は遺産を受け取れなくなってしまうので不利益を受けます。自分に遺留分があることがわかったら、できるだけ早く遺留分の請求をすべきでしょう。

 

祭祀主宰者を指定できます

祭祀主宰者とは、葬式・法事などの祭祀を主宰する人のことです。資格や人数の規定はありませんし、祭祀主宰者になると相続分が増えるということもありません。でも、指定しておけば相続人たちを悩ませることはありません。

 

「付言事項」を書いておきましょう

「付言事項」には法的な効力はありません。でも、なぜこのような遺言内容にしたいのかを記載することは、トラブルを未然に防ぐことにもなります。記載する内容は自由です。相続する人たちに伝えておきたい遺言者の気持ちを綴りましょう。

ネットで拾った「付言事項」の文例をいくつかご紹介します。

例1)
私が死んだ後、○○が老後の人生をひとりでどのように生きていくのか、心配でなりません。

そのための「老後資金」として自由に使ってもらうために全てを妻に遺すということです。
お母さんをよく見守ってください。
お母さんが亡くなった後の相続では、兄弟3人で知恵を出し合い、上手に分け合ってください。

 

例2)
私は○○年から○○会社を経営してきました。そのため、家のことは妻の○○にまかせっきりで大変苦労をかけました。また、子供たちにも父らしいことができずに申し訳ないと思っています。

次男の○○は大学卒業後、すぐに○○会社の経営に参加してくれました。業績が悪化した時や資金難に陥った時に、○○が一生懸命に働いてくれたからこそ、今でも経営が続いていると心から思っています。そこで次男の○○に事業を継いでもらいたいと考え、すべての株式を相続させることにしました。

この相続に対して家族からの言い分はあることでしょう。けれども、会社のこと、従業員のことを考えると、次男の○○に相続させるべきだと判断しています。「船頭多くして船山に上る」という諺がありますが、まだまだ小さい○○会社が競争の激しい分野で経営を確実に行っていくためには、○○に株式を集中させスピード感ある判断をしていく必要があります。また、株式を持つということは単に財産を受けつぐだけでなく、会社と従業員の運命も一緒に背負うことです。

どうかこの遺言内容で家族が揉めるようなことがないようにしてください。そして今まで私が最期まで経営に携われたのは、家族みんなのおかげです。最後に本当にありがとう。

 

例3)
※本来であれば相続権のない長男の嫁に対して、「遺贈」する場合です。

長男の嫁である○○さんに私の介護をお願いさせることになり大変な負担と苦労をおかけしました。介護中の○○さんはいつも一生懸命で、最期まで笑顔で私の介護に尽くしてくれました。炊事洗濯はもちろんのこと、身の回りのお世話をしてくれたことには本当に感謝の念で胸がいっぱいです。その苦労に報いるためにも、先に記載したとおりに遺産を遺贈したいと思います。

次男や三男には言い分もあることでしょう。ですが、私は本当に○○さんには感謝しても、しきれずにいるのです。どうかこの遺言内容で兄弟皆が揉めることのないようにしてくれると私は嬉しい限りです。父の最後のわがままですが、どうかお願いします。

 

例4)
※もし、サザエさんの磯野波平さんだったら…

私は長年にわたり苦楽を共にし私に尽くしてくれた妻フネに感謝している。
苦労しながら育ててきたサザエ、カツオ、ワカメという3人の子どもたち、心穏やかなマスオくんといつも笑顔のタラちゃんに囲まれ、本当に幸せな人生を送ることができた。ありがとう。

私の願いは、家族全員の安泰と、家族全員が仲良くしてくれることである。
私の財産の多くをカツオに相続させることに、納得出来ないと思うかもしれない。しかし、磯野家の長男として、今後の親戚付き合いやお墓のこと、私なりに考えた答えなので、サザエもワカメもそのことを理解してカツオに協力してやってほしい。

カツオ、これからはお母さんのことと磯野家をよろしく頼む。
終わりに、すばらしい家族に恵まれたことに感謝し、ありがとうの言葉を残す。

 

遺言は相続手続きが早くなる

遺言は、ストレスなく相続手続きができます。

戸籍等をすべてあつめなくて良いですし、財産分けの話し合いをしなくても良いです。実印・印鑑証明をもらいに行かなくて良いです。

遺言は、自分があげたい人にあげたいように渡せます。

金融期間の解約手続きもあっという間です。
遺言書があると金融機関の手続きは早くできるようになります。

地方銀行・都市銀行では1週間から10日程度でできます。
信用金庫や農協はおそらく即日・翌日できます。
郵便局はちょっとかかって3週間から1か月くらいのようです。

 

まとめ

遺言があるのとないのとでは相続手続きのストレスは大違いです。

遺言がないために、法定相続が終了させられないケースも多いと聞きます。

バツイチの私にも2人の子どもがいます。でも一人は行方不明でもう一人は精神疾患がある。そしてたった2人の兄弟なのに仲が悪い私の子どもたち。

遺産といっても、親からもらった今住んでいる家と土地しかないけど、これは分割できない財産。

私って「遺言が必要な人の典型だったんだ!」と今更驚いてます。

でも、気づけて良かった。これからじっくり考えなくちゃなりません。

 

 


スポンサードリンク





にほんブログ村 ライフスタイルブログ おひとりさまへ にほんブログ村 シニア日記ブログ 終活・エンディングノートへ